ヴァイン・サンクチュアリ|血の記憶を宿す平和の聖域

ヴァイン・サンクチュアリ|血の記憶を宿す平和の聖域

本作品は、ブドウの葉をモチーフに構築された神格的空間に、人類8000年の歴史に刻まれた「血の記憶」を重ね合わせたスペキュラティブ・アーキテクチャである。

空間全体は純白を基調とし、葉脈のように流れる構造が天井から壁へと連続し、生命の内側に包まれるような感覚を生み出す。この白は単なる純粋性ではなく、歴史を受け入れた後に再構成された“静かな平和”を象徴している。

中央に配置された円形の水盤は、透明感のある赤いワインによって満たされている。それは血の象徴であり、宗教、戦争、権力闘争の中で流されてきた無数の命の記憶を内包する存在である。しかし同時に、ワインは文明・祝祭・共有の象徴でもあり、対立の歴史がやがて共存へと転換される可能性を示唆している。

柔らかく差し込む光は水盤に反射し、空間全体に赤の揺らぎを拡散させる。それは過去の記憶が消えるのではなく、穏やかに空間へと溶け込み、現在の平和を支えていることを可視化する装置となっている。

中央のテーブルは、対話と共存の場として配置され、かつて対立していた存在が同じ場所に座ることを前提とした構成となる。ここでは権力は支配ではなく、共有される責任として再定義される。

本計画は、ブドウの葉という生命と時間の象徴を通して、血の歴史を否定することなく受け入れ、その上に成立する「静かで神格化された平和」を空間として提示するものである。

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